大丈夫
大丈夫大丈夫
その人の口癖は大丈夫で
どんなに無茶に思えるプロジェクトも
上司の急な方針転換も
どんな無理難題も
大丈夫大丈夫
そう言い聞かせて切り抜けてきた
もちろん成功もあれば
失敗だってあった
そしてどんなときも
大丈夫大丈夫
その言葉が隣にあった
彼はどんな気持ちでいたのだろう?
大丈夫大丈夫
震えながら呟いたこともあっただろう
大丈夫大丈夫
その口癖は最期まで口癖で
大丈夫大丈夫と言いながら
彼は亡くなっていった
大丈夫大丈夫の言葉は
どんどん大丈夫じゃない意味になっていった
ボロボロになった身体を抱え
最期まで誰かを思い自分を思い
大丈夫大丈夫と呟いていた
怖かったんだろう
何にたいして?
弱かったんだろう
誰にたいして?
大丈夫大丈夫
彼はその言葉とともに荼毘に付された
残ったわずかな骨は
彼の身体が全く大丈夫じゃなかったと告げる
そして残った私たちは
大丈夫大丈夫と
自分たちのためだけにその言葉を使った
だから結局全て大丈夫なんだと
心に鳴るどうして? は全て聞かずに……
PS
大丈夫がゲシュタルト崩壊しそうになる
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