自作自由詩 SeKKa-PoeTry

自作の自由詩かいてます

声の森(図書館)

ざわざわざわざわ、声の森

黒くうごめくたくさんの声が

あちらこちらと私を招く


ねぇ、ほら、こっちだよ

違う違う、あっちへおいき

さぁ、よく来た、いい子だね


声はよしよしと頭を撫でて

いいものをあげると笑って言った


さぁ、顔をあげて

私をよく見るんだよ

そら、これは甘い蜜だよ


まるで毒のように甘い知識が流れこむ

ぞくぞくと手足の先まで痺れが走る 


さぁさ、次はこっちだよ

そうそう、そこだよ

やぁ、こんにちは、はじめまして


知識の声の中を泳ぐ

欲しい欲しい欲しい……

もっと、もっともっと……


飲めば飲むほど渇くように

より貪欲により深く

甘い蜜を貪り喰らう


棚の隙間から本の間から

黒くうごめく声がする


ざわざわざわざわ

静かなはずの空間には

たくさんの呻きと祈りと叫びが混じる


ねぇ、ほら、こっちだよ……

呼ばれるままに

ざわざわざわざわ、声の森

CAMERA

ある日ふと撮った

何気ない景色が、何気ない仕草が

急にかけがえのない思い出になる


いつでも手の届く場所にあったそれらが

いつの日か手の届かない場所へ行ってしまう


そんなことは知らずに

ただ愛しいものをフレームに収める


空気と匂いと感情と

時間と空間のカケラ


けして手に入らないものも

フレームに収めれば全て手に入る


巨大な城も世界に一つのダイヤモンドも

すでに誰かを選んだあの人も


何気ない時間、何気ない景色

フレームの中にコピーされた

一瞬が永遠の二次元の世界

あなたのために

あなたのためにうたをうたおう

とても美しいうたを

あなたはけして手に入らぬ花だけれど

あなたのためにうたをうたおう


あなたのためにうたをうたおう

とても優しいうたを

あなたの優美さをたたえて

あなたのためにうたをうたおう


あなたのためにうたをうたおう

とても切ないうたを

あなたと私の想いをこめて

あなたのためにうたをうたおう