ざわざわざわざわ、声の森
黒くうごめくたくさんの声が
あちらこちらと私を招く
ねぇ、ほら、こっちだよ
違う違う、あっちへおいき
さぁ、よく来た、いい子だね
声はよしよしと頭を撫でて
いいものをあげると笑って言った
さぁ、顔をあげて
私をよく見るんだよ
そら、これは甘い蜜だよ
まるで毒のように甘い知識が流れこむ
ぞくぞくと手足の先まで痺れが走る
さぁさ、次はこっちだよ
そうそう、そこだよ
やぁ、こんにちは、はじめまして
知識の声の中を泳ぐ
欲しい欲しい欲しい……
もっと、もっともっと……
飲めば飲むほど渇くように
より貪欲により深く
甘い蜜を貪り喰らう
棚の隙間から本の間から
黒くうごめく声がする
ざわざわざわざわ
静かなはずの空間には
たくさんの呻きと祈りと叫びが混じる
ねぇ、ほら、こっちだよ……
呼ばれるままに
ざわざわざわざわ、声の森